生きて帰ってこれてよかったと思いました。

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La RutaMaya・国際カヌーレースは、ベリーズシティから
ベリーズ川を約200マイル(350キロ)辿って、
サンイグナシオという、マヤ族の残る山村から、カリブ海まで3人1組でカヌーに乗り、その3人の
力だけベリーズシティに帰ってくる、という耐久レースです。

朝は5時半から夜は遅いときは7時くらいまで、漕ぎっぱなしで、
レースですから、食事もボートの中で、小便は川の中で、
4日間中は、夜はテントでキャンプ生活です。

ここで日本人、海外協力隊の15人が参加しました。
ベリージアンでも、これに挑戦する人はほとんどいず、
これを完漕するのはとても名誉なことらしく、
世界各国から冒険家たちがこれにやってきます。

極限状態を体験する、というのはこうゆうことだと思います。
それでは、4日間の日記がありますので、お楽しみください。

(前日)
夜6時から、サンイグナシオホテルにて、出場者の登録と
説明会があった。

翌日は朝5時半スタートだというのに、私はその前日から、
よく眠れなかった。

自分への挑戦へのプレッシャーと、他のメンバー全員のための
準備、ドライバーの件、テントの件、自分がレースに出ている間、
誰が添乗して、どうやってサポートをしていくか。

「悲観的に準備して、楽観的に行動する」は、協力隊の考え方だが
全くその通り。
エクセル表を作って、役割分担して、こんなに組織された行動を
するのは、この国では日本人だけだ。

計画するのはいいことだが、実際はそう上手くいかないし、
ベリージアンがこっちの感覚で、急に「僕もノセッテッテよ。」
と言われると、融通が利かなくて、ありがたいけど、
ストレスがたまってしまう。

日本人はすごい。決められたことをきっちりこなしていく。
当たり前だったことが、今はとても貴重に思える。

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(1日目)
朝5時半から、すごい歓声。人だかり。ドラムの音。
みんな興奮して、舟をゆらす。
スタートと同時に、一斉に動き始めた舟90艘は、互いにぶつかり
あって、最初の10分に何艘も転倒して、それを横目に前に進んで
いく。
初日は、よくわからなかった。
何時間も経つと、前後に舟も見えなくなって、目標の見えない中で、
体まかせにリズムを刻み、チームメイトと途方もない話をして、
舟を漕ぎ続けた。

川は人々の源だ。道路もつながっていない山の中から、マヤ族の
美しい人々が、カヌーを見に川岸に出てきていた。
中には、レースを知らずに、釣りをしている人、洗濯物や子供を
洗う人までいたが、人々を見るととても元気が出た。

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(2日目)
長い長い一日だった。朝4時起床。トランペットの音と共に起こされる。

2日目は、サルの森に入るため、人の応援からは遠ざかり、
時々、ヘリコプターと救援船が見回りに来るほかは、とても孤独な戦いだ。

自然の鳥、植物、虫の音、風のささやき、すべてが染み渡った。

そのうち12時間も同じ舟の中で、食事もおしっこも共にする3人の
人間模様が見えてくる。

私といっしょに組んだのは、もう一人の協力隊の女性と、ベリージアンの男性だった。
彼は、唯一のエンジンで舵もよく知ってる人だったが、日本人のような忍耐強さや
「和」を大事にする、という感覚が全く無かった。
私はそうは思わなかったが、それでもう一人の彼女が彼に対してストレスを感じ
はじめ、「漕がなかったら、あんたは肉の固まりよ!」と叫んだ。
彼女はまじめな性格だったので、頑張る人を見ても、頑張らない人が許せなかったのだろう。

私は、二人の罵倒の間で漕ぎながら、人間って面白いな、と思いながら黙って漕いでいた。
最後は、意識が遠くなるのを抑えるように、声を出して追い込んだ。

朝6時から、夜7時まで、約11時間、100キロの道のりである。

(3日目)
昨日のチームメートの喧嘩の後、ベリージアンの男性は、
見違えたようにリーダーシップを取り出した。

今日は午後3時までと決まっていたので、朝から、トイレ休憩も
ごはん休憩もとらずに、水とチョコレートで頑張った。

便秘のせいで、気分がよくなく脱水症状になりかけ、あっちの世界と
こっちの世界を行ったり、来たりしながら漕ぎ続けた。

へびが舟のすぐ傍を泳いでいた。

肉体的に痛みにはもう慣れたので、ただ漕ぐだけ。
もう回りの景色を見ている余裕がなくて、ただひたすら早くゴールしたかった。

ゴールしたら、川で体を洗うぞ、それだけがモチベーションだった。

(4日目)

ついに、舟は山からベリーズシティへ。
他の協力隊の舟には、負けたくなかった。

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ゴールまじかにサポーターチームの日の丸が見えたときは本当に感動。
愛国精神、こんなにあったかな、っていうくらい
日本人チームの応援がうれしい。サポーターが4日間いてくれたから
頑張れた。全然知らないベリーズ人も、「レッツゴー・レッツゴー」
って、やっぱりレースは皆がいてこそ、いなかったら、
た漂流してるのも同じだもんね。(笑)

人生でマラソンを経験してから、他にどんな可能性があるだろう、って
思っていた。脚力が弱いから、坂道マラソン、腕の筋肉が弱いから、
カヌーレース。苦手なものを乗り越えるたび、これからだってできる、
って、強くなった気がする。

知ることで、怖いし、耐えられないこともいっぱいあるけど、
乗り越えるしかないから、今はまだ限界を知らない。